ゲストハウスを宿泊予約サイトで販売する♪
どんな業界も資金力がある大手法人がプラットフォームと呼ばれる消費者や利用者にとって至便なサイトを競って作ります。そこには莫大な広告費やSEO(検索エンジンからサイトに訪れる人を増やすために、ウェブサイトがより上位に表示されるための施策のこと。)にお金と手間をかけ、消費者や利用者がネット検索で最初に訪れる『入り口』を奪い合います。
宿泊業界も例外ではなく、数多ある宿泊施設を比較しながら検索できるいわゆる「宿泊予約サイト」(宿泊業界ではOTA ”Online Travel Agencyの略”)がたくさんあります。
今現在、宿泊業界で働いていなくてもだれでも宿泊者としてよく目にする、または使っている予約サイトがあるでしょう。以下にそれぞれの宿泊予約サイトの特徴を列挙してみます。
宿泊予約サイトの特徴
Booking.com ブッキングドットコム 【グローバル】
●今や世界最大のOTAに成長し、日本のマーケットにおいてもじゃらん、楽天を凌ぐシェアとなっているので、掲載は絶対に欠かせない。
●基本は部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)であるが、収容人数に応じた割引、割増設定を管理画面からすることができて便利
●現地決済がメインであるが事前決済の受け入れも追加できる
●直前割、早期割、連泊割、長期割などの定番プロモーション以外に、プリファードプログラム、Geniusプログラムへの参画がキーとなる。
●管理画面の使い勝手は良いと言える。写真の順番を特定できる。
●宿泊施設の種別の中に「ゲストハウス」「ホステル」があるので、利用者はソートしやすい。
●分からない点などがあっても担当者へ連絡がつきやすく、丁寧に教えてくれる。ただ、サポートセンターの担当者は杓子定規な対応をする
手数料:通常は12%だがプリファードプログラムへの参画で15%となる。
Agoda アゴダ 【グローバル】
●タイを中心にアジアでの認知度が高い。Booking.comと系列がが同じ会社であり、Booking.comで販売している在庫がアゴダでも販売される。
●基本は部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)で、人数売り(収容人数ごとの宿泊価格設定)ができない
●基本的に事前決済となるが、Booking.comの在庫が反映するのでBooking.comで在庫を出している限り現地決済でも販売していることになる。
●直前割、早期割、連泊割、長期割などの定番プロモーションがあり、アゴダ グロース エクスプレス(AGX)やアゴダグロース プログラムの活用がポイントとなる。
●管理画面はスムースに作動し使い勝手は悪くない。
●施設ごとの担当者との関係は希薄で相談などほぼできない印象
手数料:通常12%だがグロースプログラムへの参画で17%以上の手数料となる。国内向けは9%
Expedia エクスペディア 【グローバル】
●アメリカでは認知度が高く、日本含めその他の地域ではまだシェアは少ない。民泊物件は傘下のVrboで掲載される。
●部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)か人数売り(収容人数ごとの宿泊価格設定)かを選択できる
●直前割、早期割、連泊割、長期割などの定番プロモーションがあり、航空券とセットとなる販売プランがある
●管理画面上で、宿泊者とのやりとりをする機能が劣る
●施設ごとの担当者がおり、販売に対する提案などについて時折連絡がある。
手数料:12%~18% 地域、宿泊施設の種別、事前決済か現地決済かによって手数料が異なる。
Hostel World ホステルワールド 【グローバル】
●名前のとおり、ホステルやゲストハウスに特化したグローバルな宿泊予約サイトで、生粋のバックパッカーはこのサイトを利用することが多い。
●欧米での認知度が高くアジアでの利用者は少ない。
●部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)しかできない。
●長い間一貫して他のOTAのようなプロモーション仕様がなかったが、最近になって直前割、長期割、返金不可などプロモーションが設定できるようになった
●管理画面は日本語にできない。日本には担当者が数人しかいない模様で(日本語はできる)、即時の対応は期待できない
手数料:12% 手数料をあげることで掲載順位をあげることができる。
Air bnb エアビーアンドビー 【グローバル】
●民泊物件の掲載では一番有名で日本国内でもシェアナンバーワン。ゲストハウスやホステルの他、一棟貸し物件も多数掲載している。
●他のOTAと異なり、部屋タイプそれぞれが1つのリスティングとして扱われる
●部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)となるが、追加人数設定ができる
●早期割、長期割、直前割のプロモーション設定が可能である。
●管理画面上で困ったことがあれば、管理画面上のヘルプからチャットで問い合せることができる
サービス料:ホスト側とゲスト側で分割する「サービス分割」型の場合、通常のホストサービス料率は3%。ホストのみが負担する場合のサービス料率は通常14〜16%。
楽天トラベル 【国内】
●日本国内ではじゃらんと並ぶ大手OTA。民泊物件は傘下の楽天LIFULLで掲載できる。楽天ポイントとの連携が強み。海外OTAにはない宿泊プランが設定できる。
●インバウンド設定があるが海外からのゲストはほぼ期待できないため【国内】とした
●部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)か人数売り(収容人数ごとの宿泊価格設定)かを選択できる
●先述の【グローバル】なOTAのように部屋タイプだけをシンプルに販売するのではなく、○○プランと称し、特典・食事・チェックイン時間などプランごとに特徴を出して販売するのが一般的。
●各施設ごとに担当者がおり、管理画面にその担当者が掲載されている。
●管理画面は非常に使い勝手が悪い。手前いらず、ねっぱんなどのサイトコントローラーと連携していれば料金や在庫の設定を管理画面からする機会はないと思うが、直で楽天の管理画面で料金と在庫の調整をする場合、かなり面倒である。
手数料:1人利用の場合 8.64%~10.64%、2人以上の場合9.99%-11.99%
じゃらん 【国内】
●楽天と並ぶ国内大手OTA。リクルート系列で、Pontaポイントと連携が強み。海外OTAにはない宿泊プランが設定できる。
●インバウンド設定があるが海外からのゲストはほぼ期待できないため【国内】とした
●部屋売り(部屋単位で宿泊価格を設定)か人数売り(収容人数ごとの宿泊価格設定)かを選択できる
●先述の【グローバル】なOTAのように部屋タイプだけをシンプルに販売するのではなく、○○プランと称し、特典・食事・チェックイン時間などプランごとに特徴を出して販売するのが一般的。
●管理画面トップページの下部に記載の問い合せ電話番号は比較的にすぐにつながり、設定についてなど丁寧に教えてくれる。
●管理画面は楽天に比べると使い勝手がよい。ただ、ブラウザはMicrosoft EdgやExploreが推奨環境。
手数料:1人利用の場合 8%-10%、2人以上の場合10%-12%
その他
●C-Trip シートリップ:中国発祥でもちろん中国ではシェアナンバーワンのOTA。中国人からの集客を望むのであれば、必須のOTAとなる。
●Vrbo (旧ホームアウェイ): エアビーアンドビーに次ぐ民泊プラットフォームでエクスペディアの傘下
●バケーションステイ(楽天LIFULL): エアビーやVrboと比較して後発の日本の民泊予約サイト。楽天の傘下であり楽天にも在庫が流れる仕組み。
●るるぶトラベル:JTB系列の宿泊予約サイト。国内OTA大手2社(じゃらん、楽天)に比べてシェアはかなり低い。海外向けには、JAPANiCAN.comという予約サイトと連動している。
●Relux:審査員により厳選された高級旅館、ホテルのみを取り扱っている。英語、中国語、韓国語を話せるコンシェルジュスタッフが常駐している。
●一休:高級旅館・高級ホテルのみを取り扱っている宿泊予約サイトとしては老舗で、客層は富裕層が多い。管理画面の使い勝手はかなり悪い。
どの宿泊予約サイトへ販売するべき?
販路を広げるためには、先に列挙した宿泊予約サイト(海外にはここに挙げたメジャなもの以外に無数に予約サイトが存在する)にできるだけ多く登録したほうがよい。なぜなら、宿泊予約をする利用者はそれぞれ贔屓にしているサイトがあるからです。
例えば、楽天ポイントを最優先にする人は、やはり楽天トラベルを利用します。同じく、Pontaポイントを貯めたい人はじゃらんを利用しますね。はたまた、Booking.comであれば、Genius会員となることで宿泊代金が割引されるので、Genius会員の人は繰り返しBooking.comを利用する傾向にあります。
翻って、つまるところは、できるだけ多くの宿泊予約サイトへ登録するということに帰結します。しかし、それぞれの宿泊予約サイトはそれぞれ異なる対応をしなければならないため、多くの宿泊予約サイトを管理するということは、明らかに労務負担がかさみます。 それは、予約のキャンセル対応、ゲストへのメッセージ送信、経理処理など多岐に渡ります。
この労務負担(=労務コスト)を軽減するために多くの宿泊施設が『サイトコントローラー』という機能を使うわけですが、そのサイトコントローラーについてはこちらへ。
さて、サイトコントローラーがあるとはいえ、できるだけ効率よく販路を絞ったほうがよいということはおわかり頂けたと思います。先の項で挙げた特徴を踏まえて、貴方が泊まってほしい客層を念頭に宿泊予約サイトを検討しましょう。
組合せ例1)兎にも角にも海外からのゲストを最優先する
ゲストハウスを運営するスタッフが英語ができ、外国人バックパッカーにできるだけ多く泊まってほしい、特に欧米圏のゲストが好ましいとお考えであれば、Hostel Worldは欠かせません。そして、次に挙げるのはやはり、グローバルな宿泊予約サイトの中のリーディングカンパニーである Booking.comでしょう。
アジアからのゲストも取り込みたい、出店エリアが九州エリアで特に韓国人需要を期待したいのであれば、Agodaが欠かせないと思います。
じゃらん、楽天への販売をすることで日本人からの予約が期待できますが、その反面海外OTAと異なる点(在庫の出し方、販売方法など)が多いため、労務コストがあがるのは必須です。
組合せ例2)日本人ゲストが優先、海外からのゲストも一応受け入れ可である
国内需要では、じゃらん と 楽天トラベル の2社で8割以上のシェアがあると言われていますので、この2社は欠かせません。そして、次に、余裕があれば るるぶ も含めてよいでしょう。
スタッフの英語対応に自信はないものの海外からの予約もできれば受け入れたいという場合は、Booking.comなどのグローバルサイトへ登録し、対応言語を日本語だけにしておくのがよいでしょう。
組合せ例3)兎にも角にも販路を広げどんな人でも受け入れたい
この場合は、あまり何も考えず、手当たり次第すべてのOTAへ登録することになります。エアビーアンドビー、Vrbo、楽天LIFEFULなどの民泊系の予約サイトも含めることで、販路は確実に広がります。ただ、ゲストハウスでありながら高級旅館向けの予約サイトに掲載してもらおうとするならば、審査があり掲載できるとは限らないということを覚えておきましょう。
そして、肝に銘じておかなければならないことは、販路を広げるということは客層を広げることになります。つまり、それぞれの客層にはそれぞれの宿への期待値というものがあり、宿として幅広い期待に応えることが求められます。期待に応えられなければたちまち満足度の低下につながりかねないという事を肝に命じておきましょう。