旅館業の定義と種別~ 適法にゲストハウスを営業する ~

旅館業の定義とは?

憲法で保証されている経済的自由権の一つに「営業の自由」というものがあります。しかし、どんな事業でも野放図な状態であれば消費者が安全で安心に経済活動をすることができません。

飲食店であれば、衛生的に食事を提供してもらわなけば、食中毒を引き起こすかもしれませんから、飲食店営業許可を取得しなければならないわけで、宿泊業も旅館営業許可を取得しなければならないのです。

旅館業法の第一条には、こう書かれています。

第一条 この法律は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

その旅館営業というものを法的に定義する旅館業は、何をもって宿泊業とするのでしょう?

旅館業法(1948年法律第138号)において、

旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」であることとされ、「宿泊」とは「寝具を使用して施設(ホテル、旅館等)を利用すること」とされている。

この「営業」とは、施設の提供が「社会性をもって継続反復されているもの」であるかどうかで判断されるわけであるが、その旅館業法の定義と解釈を踏まえ、厚生労働省が旅館業にあたるかの判断基準を4つ示している。

厚生労働省より「旅館業法の適用判断」

※旅館業法の適用判断について 厚生労働省より

(1)宿泊料徴収の有無

「宿泊料」とは、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も含まれ、名称のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものだということです。

ただし、食費代、テレビ使用料、体験料などは対象外。これら宿泊に付随しないサービスの対価であり、社会通念上、個々のサービス対価と考えうる額しか徴収しない場合は、旅館業には該当しないということです。

言い換えれば、「宿泊料」ではなく「食事代」などと銘打って料金を徴収したとしても、その料金が社会通念上食事代の対価として考えうる額を上回っている場合は、実質的に宿泊料を徴収していると判断され、旅館業には該当することになるということです。「名称にかかわらず」とはこういうことで、実態に照らし合わせるということです。

(2)社会性の有無

社会通念上、個人が生活する上での行為を超えるもの、つまり親戚や知人を宿泊させるといった範疇ではを超える場合に「社会性」があるといえます。

言い換えれば、不特定多数の人が対象になっており、ホームページや予約サイトなどを通じて宿泊者を募集し、その行為が繰り返されている場合は、旅館業に該当することになります。

(3)継続反復性の有無

先の(2)の行為が、反復して継続しているかどうかです。曜日限定、季節営業など営業日を限定した場合であっても繰り返し行っている場合などは、継続反復性があるといえます。

年に1度(2~3日程度)のイベントが開催時であって、自宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高い場合は、継続反復性がないと判断されるが、そうではない場合は「継続反復性がある」と判断され、旅館業に該当することになります。

(4)生活の本拠

使用期間が1ヶ月未満(ウィークリーマンション等) である場合や使用期間が1ヶ月以上であっても、部屋の清掃や寝具類の提供等を施設提供者が行う場合は、旅館業に該当することなります。つまり、使用期間が1ヶ月以上(マンション、アパート、マンスリーマンション、サービスアパートメント等)で、使用者自らの責任で部屋の清掃を行う場合は、「生活の本拠」と考えられるということです。

※病院、特別養護老人ホーム等、他の法律に基づく目的を達成するため、付随的に宿泊を行うものについては、その目的、衛生面の対応状況等を踏まえ、旅館業法の適用外としているものもある

ゲストハウスを宿業として営業するってことは「宿泊料を徴収する」わけですし、対象となる宿泊者は「不特定多数」で、イベント開催時だけ単発で営業するわけではないわけで、部屋の清掃だって運営者側でやって当然なわけですから、普通にゲストハウスを運営するからには、旅館業法が適用されるわけです。

 

旅館業の種別 – ゲストハウスが該当する種別とは?

旅館業法の第二条にはこう書かれていて、以下の4つの種別が旅館業に該当すると記載されています。

この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。

旅館・ホテル営業※

【旅館業法】施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの。
【旅館業法施行令】一客室の床面積は、7平方メートル(寝台を置く客室の場合は、9平方メートル)以上であること。
(※)改正旅館業法施行の2018年6月15日より、従来の「ホテル営業」及び「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」として、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの」として一本化された。

簡易宿所営業

【旅館業法】宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの。
【旅館業法施行令】客室の合計延べ床面積は、33平方メートル以上であること。(宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上であること。)

下宿営業下宿営業

【旅館業法】施設を設け、1ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業のこと。

 

ゲストハウス特有のドミトリーを設けるってことは、多人数で共用する構造となるわけですから、ゲストハウスを営業するってことは、一般的には、旅館業法上の簡易宿所営業に適用されることになります。

しかし、必ずしも簡易宿所営業でなければならないというわけではありません。たとえば、もともと旅館であった、ホテルであった物件をゲストハウスに転用する場合で、間取りなどが変わらない場合、そのまま旅館ホテル営業として営業許可を申請するほうが手続きとしてスムースになります。

○○ゲストハウス という名称であるからといって、簡易宿所営業でなければならないというわけではありません。逆に○○旅館という名称でも、旅館業法上 簡易宿所営業が適用される場合は、簡易宿所営業として申請しなければなりません。

 

ゲストハウスとして営業する上で、種別(ホテル・旅館営業 / 簡易宿所営業)はどのように関係するのでしょうか?
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