ゲストハウスでも受付(フロント、玄関帳場)を設置せず無人受付ができるのか?

ゲストハウスでも受付(フロント、玄関帳場)を設置せず無人受付ができるのか?

いわゆる民泊サービスの運営を考えられている方は、

1)住宅宿泊事業法による住宅宿泊事業としての届出を行う
2)国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受ける
3)旅館業法上簡易宿所営業の許可が得る

という選択肢になりますが、それぞれ適法に営業するための要件が異なります。
くわしくは、こちらのサイトを参照ください。

「民泊サービス」ではなく、3)の旅館業法上の簡易宿所営業またはホテル・旅館営業を取得した上で、ゲストハウスの運営を考えられている方の場合、多くは受付(フロント)を設置することが前提であると思いますが、なかには受付フロント(法律用語でいうところの『玄関帳場』)を設けないでゲストハウスの運営を考えられる方もいるでしょう。

このページでは、

3)旅館業法上簡易宿所営業の許可が得て、玄関帳場を設けないゲストハウス運営について考察します。

まずは、法律の話しです。
以下のページでも法律の立て付けについて説明していますが、

旅館業に関わる規定が以下のとおりであることを前提として話しを進めます。

法律(旅館業法)

政令(旅館業法施行令)

厚生労働省令(旅館業法施行規則)

という順に具体化され、さらに各地自治体が地域独自の条例を制定している場合が多くあります。
なお、「旅館業における衛生管理要領」というものも存在し、これは行政が旅館業法等の解釈について指針を示した内規です。いわば、行政規則であるので法規としての性質はないとされています。

ゲストハウスだからといって、簡易宿所営業とは限りません。旅館業法では、『旅館・ホテル営業』と『簡易宿所営業』という種別があります。※以前は旅館とホテルもそれぞれ別のカテゴリーでしたが、今は統合されています。

簡易宿所営業の場合

こちらの参考資料によると

簡易宿所営業については、旅館業法施行令(昭和 32 年政令第 152 号)における
構造設備基準において、玄関帳場その他これに類する設備(以下「玄関帳場等」という。)に関する規定を設けていない。
他方、旅館業における衛生等管理要領(平成 12 年 12 月5日付け生衛発第 1811号厚生省生活衛生局長通知「公衆浴場における衛生等管理要領等について」別添3。以下「要領」という。)においては、かつて簡易宿所営業の施設設備の基準として「適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。」と示していたが、「旅館業法施行令の一部を改正する政令の施行等について」(平成 28 年3月 30 日付け生食発 0330 第5号厚生省生活衛生局長通知)において、要領の当該規定を「適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと。」と改正し、簡易宿所営業における玄関帳場等の設置について条例で規定している都道府県等(保健所を設置する市及び特別区を含む。以下同じ。)に対し、実態に応じた弾力的な運用や条例の改正等の必要な対応についての特段の御配慮をお願いしたところ。現時点では、一部の都道府県等において、玄関帳場等の設置について引き続き条例で規定しているところである。
今般、「「歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース」における取りまとめ」(平成 29 年5月 18 日)(別添参考資料参照)を踏まえ、複数の簡易宿所において共同で玄関帳場等を設置する場合の取扱いについて、以下のとおりお示しするので、条例により簡易宿所営業における玄関帳場等の設置を義務づけている都道府県等におかれては、改めて、特段の御配慮をお願いしたい。

1.都道府県等が、条例で、簡易宿所営業の施設に対し玄関帳場等の設置を求めている場合において、
(1)一の営業者が複数の簡易宿所を運営するときに、一の玄関帳場等を設置して、それら複数の簡易宿所の玄関帳場等として機能させること。
(2)複数の簡易宿所の営業者が、共同して一の玄関帳場等を設置して、それら複数の簡易宿所の玄関帳場等として機能させることは、緊急時に適切に対応できる体制が整備されていれば差し支えないこと。

2.1の(2)にいう「緊急時に適切に対応できる体制」とは、宿泊客の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね 10 分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
「緊急時に適切に対応できる体制」が整備されているか否かは、基本的に、職員等が駆けつけるために通常要する時間によって判断されるべきであり、また、職員等が玄関帳場等から駆けつけるとは限らないことから、玄関帳場等からの距離によって機械的に判断するような取扱いは想定していないので、御留意いただきたい。

3.1の(2)により、複数の簡易宿所の営業者が、共同して一の玄関帳場等を設置する場合には、玄関帳場等を設置する営業者が他の営業者が営業する簡易宿所の宿泊客の宿泊者名簿の作成等を行うことが想定されるため、個人情報の取扱いについて関係法令の遵守等、特に留意が必要であることにつき、関係者に対する周知等をお願いする。

もともとは、旅館業法施行令における構造設備基準において、玄関帳場その他これに類する設備に関する規定を設けていなかった。

他方、旅館業における衛生等管理要領においては、かつて施設設備の基準として「適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。」と示していた。

しかし、(平成 28 年3月 30 日付け生食発 0330 第5号厚生省生活衛生局長通知)において「旅館業法施行令の一部を改正する政令の施行等について」、要領の当該規定を「適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと。」と改正した。

それにともなって、簡易宿所営業における玄関帳場等の設置について条例で、実態に応じた弾力的な運用や条例の改正等の必要な対応についての配慮をお願いしている。

それにしても、よく分からないですよね。結局、厚生労働省は「通知」なるもので「望ましい」という言い方に変えていて、規制が緩和されているわけですが、他方自治体の条例があるので、最終的には各自治体の条例に従って、要件を満たす必要があるということになります。これを『上乗せ条例』といいます。

なんともややこしいわけでありますが、兎にも角にも規制が緩和される方向であることに間違いはありません。それはひとえに、コロナ前のインバウンド産業が活況であった最中、東京オリンピックの開催も目の前に迫り、とにかく宿が足りないという世の中の潮流によるであります。

そんな中、住宅宿泊事業法(民泊新法)や民泊条例ができ、旅館業法も規制緩和の方向へ動いたわけです。

ホテル・旅館営業の場合

ホテル・旅館営業の場合、

旅館業法(法律の規定)では、旅館業施設に関する構造設備の基準を具体的に規定しておらず、施設の構造設備に関する基準は「政令」の定めに委任しています。「政令」とは、旅館業法施行令を指します。

旅館業法施行令(施行日: 平成三十年六月十五日)
第一条一項 二
宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するものを有すること。

そして、その政令をうけて、厚生労働省令で(旅館業法施行規則)

旅館業法施行規則(施行日: 平成三十年六月十五日)
第四条の三
旅館業法施行令(昭和三十二年政令第百五十二号。以下「令」という。)第一条第一項第二号の基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
二 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。

と改正されました。これをもって、簡易宿所営業だけではなく、旅館・ホテル営業においても従来のように受付(玄関帳場)を館内に常設しなくてもよいということになります。

しかしながら、実態としては各自治体により解釈が異なり、要求されるレベルも異なるのが実情です。また、法律よりも厳しい基準を課す『上乗せ条例』と呼ばれる条例を制定している自治体もあるので、全国的に物理的にこうすれば良いと断言できるものはありません。

ただ、自治体に向けた条例の解釈指針となる「旅館業における衛生管理要領」をみることで、方向性をうかがいしることができます。

旅館業における衛生等管理要領
Ⅱ 第1 8(玄関帳場又はフロント)

善良風俗の保持上、宿泊しようとする者との面接に適し、次の(1)から(4)までの要件を満たす構造設備の玄関帳場又はフロントを有すること。ただし、(5)の要件を満たす場合は、玄関帳場又はフロントに代替する機能を有する設備を備えているものとして、玄関帳場又はフロントを設置しないことができること。

(1)~(4) 略
(5) 次の全ての要件を満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができていること。
1) 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆けつけることができる体制を想定しているものであること。
2) 営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること。
3) 鍵の受渡しを適切に行うこと。

①(緊急時に)迅速な対応を可能とする設備を備えていること

衛生管理要領にもある通り、おおよそ宿泊施設から徒歩ないしは自転車で10分圏内に事務所などがあれば問題とされないケースが多いです。事務所などの設置が困難である場合、運営を代行する会社などに駆けつけ対応を依頼することで認めてもらえるケースが多いようです。

② 宿泊者名簿の取得を担保できること

通常、予約サイトなどからの予約であれば事前に予約者の情報を取得できますので問題ありません。ただ、外国人の宿泊の場合、パスポート画像の取得が必要となります。

③出入りの状況を確認できること

これは衛生管理要領の記載のとおりビデオカメラをエントランス部分に設置することで宿泊者本人の出入りを確認し、要件を満たせるでしょう。ネットワークと連動させることで、遠隔地から複数拠点を管理することも可能になります。

④鍵の適切な受渡しが可能であること

何をもって「適切な受渡し」であるかです。この点が曖昧で自治体によっては、直接が人が手渡すということが「適切」と解釈しているところもあるようで、そうであれば、玄関帳場がなくとも人手がかかることになっていしまい労務コストを抑えることができません。
しかし、この点について厚生労働省の見解が伺える資料があります。

「旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」について(概要)

これによると、玄関帳場代替措置の具体例として「ビデオカメラによる顔認証による本人確認機能等のICT設備を想定」と明記しています。このことから、顔認証による本人確認等を前提としてICT機器により鍵を交付することも「適切な受渡し」に含まれると解釈できます。

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